

虚空に立つ裸樹
その背を冷たい風が吹き抜けていく
これからやって来る永い冬に立ち向かう枝たち
そこに 苦しみも辛さも垣間見ることがない
ただ あるがまま
強い風にも 冷たい雨にも
凍えつくような吹雪にも
或いは柔らかな陽が差し込んで
優しい大気に包まれても
何があっても 変らぬ風情で 時をやり過ごす
淡々として それでいて強靱な生命の営み
与えられた場所に じっと佇む
何も言わず ただじっとして…
必ずやって来る 必ず戻って来る陽春を胸に抱いて
まるで墨絵のように まるで影絵のように
飾り立てるもの 華やぐもの 生命の息吹きの全てを
剥ぎとり捨て去り その身を冬にして 冬の空に同化して…
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