 キャンドルの明かりに照らされた 仄暗い店の片隅 街路灯の優しい光も受けて 顔を見合わせ その目の中に 互いの思いを確かめ合った あの日 交わす言葉もいらない ただ見詰め合い ほんのり紅いロゼのワイングラスを 合わせた時の カチンという小さな音さえ 何故か心に沁みていた ほんの些細な行き違いが 幾度も重なり 誤解が誤解を生みチグハグに心が交差する 愛の確認が揺らぎはじめた時から 互いの背が強張り いつしか振り向けなくなっていた 無理をして サヨナラと手を振った 遠いあの日から 戻せない月日が経っても 愛の名残りは 心の奥深くに刻み込まれ 思い出の日々が 今もなお 寂寥と共に 繰り返し甦る ポインセチアの緋色が 一層赤味を増し 帰らない時を想って 胸の中に燃え立っている 愛を失う瞬間は 寂寥感を知覚する事なく 呆然として時をやり過ごす そして悲しみは空しく過ぎる時の流れの中で 次第に加重を増していく ふいに訪れる出来事は全て心の奥底に 一気に封印され 感覚も閉ざしてしまう そして暫くして封印が解かれ 感情の蓋が開き 悔恨と未練の嵐が吹き荒れる 帰らない時空 戻らない愛 その残滓に心痛む それがロストラブ・シンドローム
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