
もうすっかり色褪せて
風化しているはずなのに…
心の奥底に咲き続けている花
血の色にも似た深紅の花びらが開いている
そんなもの手折らなければならないと
いつまでも咲かせていてはならないと
幾度も幾度も思いながら
やっぱり捨てきることが出来ない
残り火のように燃え続けている
『恋の残留思念』
あの人の心の印画紙には
どんな姿で写っているのだろう…
…もはや ネガフィルムの暗転画像のように
影だけの存在になってるのだろうか?
それとも もうすっかり風化しきって
虚空に飛び散ってしまったのかもしれない
全てが消失して何もかも見えてないのかもしれない
きっとそうだろう
でもたとえ そうだったとしても
この想いが色褪せることはない
いつまでも 仄かに
いや今なお鮮やかに燃え続けている
… … … … … … …
恋の残り火は切なくて哀しくて、心から同情します。
かといって同感出来る心象ではありません。
新たな出会いが無い事の、さらなる愛情対象を持たない事の
言い訳のように、丸ごと後ろ向きの生き方です。
過去から抜け出せない、抜け出そうとしない生き方だからです。
恋は向き合うステージがあるからこそ、
喜び悲しみがあり苦しみ楽しみが繰り広げられるのです。
そこに生の人生ドラマが演じられるのです。
もう二度と傷つきたくないから、別れの辛さを味わいたくないから、
そんな感情もあるでしょう。
或いは、昔を越える相手が出てくる事がないと思う人もいるでしょう。
さもなければ、自分が望んでも相手から選んで貰えない事もあるでしょう。
だから寂しくても哀しくても、安全な恋の残留思念に身を委ねて時をやり過ごすのです。
過去の思い出が同時進行して渦を巻く不思議空間の住人です。
独りでいながら決して孤独じゃない、そんな渦の時空に入り込んでは
虚実ない交ぜの架空恋愛に勤しむ。
その残り火が微かに仄かにどころか、むしろ赤々と燃えているのが哀しい。
やはり哀しすぎます。
『残留思念』再び 加筆改稿
スポンサーサイト