
過去の出来事を 美しく楽しい想い出にするのも
辛くて哀しい 苦しみに溢れた出来事にするのも
回想するあなたの心次第 思い次第
通り過ぎてきた道 辿ってきた道程を
どんなものにするのか どんな色に染めるのか…
曲がりくねった細い道 迷い道
欝蒼として険しいけもの道 いばら道
それとも広々と見晴らしのよい平坦な道
小鳥達の囀る声が聞こえてくる
草木や花々に満ち溢れた田園の小径
どんな道にするのも あなた次第
どんな出来事にも 表と裏がある
辛く苦しい悲惨な出来事から学ぶことも多い
でも浮き浮きした幸せ気分から
奈落の底に転がり落ちることもある
過去に印された絵は 様々な心象を描き出す
だから 過去を引きずらないために
過去の傷跡をトラウマにしてしまわぬように
悔恨の渦に飲み込まれてしまわぬように
闇に塗り込めるようなことをしないで
次々に想起して掘り起して 一つ一つ
穏やかな色に 豊かな彩りに染めていって欲しい
あなたは そこを歩いて来た くぐり抜けて来たのだから
過去というカラを脱ぎ捨てて 今日という日を
今を生きているのだから…
「過去を振り返る」 過去というのは実は曖昧なものなのです。
記憶を辿り過去を追想して、「こんな事があった、あんな事があった」と当時の出来事を振り返るのですが、その時の自分の心象や感慨が重なっているので事実はかなり変容を遂げていくのです。
この感慨こそが時代を経るごとに変化していくため、思い出が変わるというより、思い出への解釈、意味づけが変わっていくのです。
自分史は追想の度ごとに、描き換えられ造り替えられていくと言ってよいでしょう。ハタチで回想する過去、三十で追想する過去、四十、五十に至り思い出す過去、そして老境となってしみじみ感慨を込めて辿る過去。
かつて読んだ本を何年かして読み返してみれば、まるで違う読み取りをしている事に気付く筈。映画を観てもしかり。かつて解り得なかったものが解っている。かつて胸震える程に感動した事も色褪せて見えたり、或いはまるで違う所に感動を覚えたりする。自分の心象や意識が変わると同時に、物事はまるで違った色合いになるものです。
時として、歴史は新たに捏造もされる。感慨だけでなく、自分が生きやすくなるために、過去の事象を取り替え組み替え、都合よく辻褄合わせをしていくのです。無作為の作為が働き自分自身にも嘘をついていく。幾度も繰り返す事で捏造も本当の自分史にしてしまうのです。
この歴史創造の能力こそが、明日を導く原動力にもなってくる。より良い嘘はトラウマすら消去していくのです。
自分を愛し高めるための、素晴らしい自伝的虚構を図ってみたらいい。しっかり辻褄を合わせ整合性を持たせて、人格も高めて人生もスケールアップするような『自分史』 の脚色は、是非取組んで欲しいものです。これは決して嘘にはならないものです。生きる極意の裏技編であります。
『自分史は創るもの』 加筆改稿