
あの頃 あの時…
若かった頃 あの時代は……
そんな風に 遠くに過ぎ去った時空を振り返り
懐かしむのはいい 思い出に浸るのもいい
でも 今の自分の不遇ばかりを
嘆いて固く目を閉ざしているキミ
風化して色褪せていく過去なのに…
その逆に回想する度に尚一層輝きを増す過去がある
まっしぐらに脇目も振らずに未来に向かって
目的地を目指して走っていこうとすれば
過去はどんどん風化していく
胸の内から 心の中から遠のいていく
次々に離れて翔び去っていくだろう
でも内に籠って蹲(うずくま)っていたなら
心の中に膨らむのは過ぎ去ったものの輝きだけ
でも それが真に輝く「時の結晶」なのかどうかも定かじゃない
心が闇雲に創り出した幻影の放つ輝きかもしれない
「風が押してくれないから動き出せない」
「波が打ち寄せてこないから進めない 」
「そんな船に乗っている自分だから…」
そんな言い訳ばかりを繰り返すのをやめて
気持を 思いを 心を強くして
精一杯 体中から気を発して天空高くに帆を揚げよう
自からの弱さが作り出した壁に体当たりして
疾風を巻き起こして 怒涛のごとき大波を呼び寄せたらいい
そんな船にしたらいい!!
心を凍らせ 思い出の化石を抱えるのは容易(たやす)いけど
霞んだ眼(まなこ)で茫然と虚空を見上げて
すっかり諦めたように表情を凍らせるのは
あまりに哀しい あまりに辛い
心の霧氷が融けて 胸の内から新たな想いが動き始めたら
霞んだ眼にも その瞳孔に鋭い光が走り
張りのある肌が甦り 生き活きとした表情が取り戻せるだろう
過去を振り返る 辿って来た道を振り返るより
これから歩く道筋 明日へと続く道程へと心を向けて欲しい
弾む心を持って欲しい 胸を張って歩き出して欲しい
いつだって 何処だって 未来があるんだ
だって人生は常にこれからなんだから!
『思い出の化石』復刻改稿