

可憐な花びらが風に揺れて
その儚げな風情が いつしか郷愁を誘う
葉の間から覗く空の色 流れ行く雲が
思い出の中へと旅立たせてくれる
背丈に近いコスモスの花達に
顔を寄せ香りを嗅いだ 遠いあの日
匂いも解らずに 思わず花びらをちぎりかけ
すぐにも諫(いさ)められたっけ
諫めた人が誰だったのか?…
空は何処までも澄み渡り 限りなく広がっていた
恋する人が摘んでくれたコスモスの花を胸に挿し
暖かな陽射しに包まれて 花園に遊んだ
肩を寄せ合って 落ちる夕日を眺めていたっけ
胸の中に陽溜まりが生まれて 至福の時を過ごしていた…
幼な子の小さな柔らかい手を引いて
コスモス畑の中を歩きながら
こみ上がる思いに ふと涙ぐむ
それは忘れられない心の原風景を追想したからかもしれない
時が逆旋して 童心へと連れ戻される 懐古の寂寥かもしれない
淡紅色の花びらが 白い花びらが
胸に甘酸っぱい蜜を溢れさせてくれる
忘れてはいないけど いつの間にか時の彼方に追いやっていた
遠いあの日の あのひと時が
コスモスの花と一緒に 目の前に立ち現れて
胸の中に温かな風が流れ 新たな息吹きが生まれていく…
『秋桜』再び… 加筆改稿