
きのうまで胸トキメかせていたのに
今朝だって いそいそと支度していたのに
顔を見た途端 何も言えなくなっていた
甘えたくて 構われたくて 愛されたくて
話したいことも沢山あって
聞きたいことも山程あって
その胸に飛び込んで行きたかったのに…
その人の前に出たら 足も竦んで
動けなくなって 何も言えなくなって
ただ じっと目を見詰めていた
やっと会えた
何か月ぶりだろう こうして会えるなんて
揺れる想いを抱えて
いつの間にか自己処理するクセが
ついていたのかもしれない
溢れる想いが
目から目へ伝わっただけで
もう それだけで良かった
その目の中に映る世界しか
見えなくなっているから…
そして その目の中に小さく
愛らしく映る自分を探して探して
やっとの思いで見つけて安堵するのです…
そんなひたむきで、奥ゆかしくて『秘すれば華なり』の女心に触れて、
より一層の愛を深めるのが、受けて立つ男の本懐の筈。
ところが現実は反って、後退りして引いていく男の実体が見えてきて…
何故? 何故? と切実に問い掛け、訴え掛ける涙目を前にして.
しばし返す言葉も無くなっていく…
素直で可憐で愛らしく、潤いのある瞳は深い寂寥を湛えた美しい人…
微笑みも静かにおごそかに、高笑いなどはあり得ない。
むしろくぐもった含み笑いに近い。ウフフ…オホホ
否応なしに受け身になっているのか、それとも受け身が楽だから、
身も心も自分の全てを相手に委ねるのが愛される秘策と信じているのか…
でも委ねられた男の側は、何もかもを受け入れて、受け止めて…
そういう事を考えているうち、いつしかしんどくなって引いていくのだろう。
『耐えられない存在の軽さ』という映画がかなり前にあったが、
それとは真逆の『存在の重さ』に耐え切れずに、
男はたじろぎ逃げ腰になっているのである。
情の深さ 重さ 求められる愛の依存度の高さに唖然として
途方に暮れている男の実態想念が飛んで来る。
瞳に映る自分の姿を食い入るように見詰めて、見詰めて…
ウフフ…
そんな相手の執拗な求愛行動の重さ、その存在の重さに……
いつの間にか何だか底知れない情念を醸す
女の人の波動を浴びて、いささか怖い時間でした。