焦らないで 慌てないで

今はまだ 時が来ていないだけ

そして

時が満ちたとき

あなたの心が変わりはじめる

想いが熟し わだかまりも揺らぎも無くなった時

奔流のように流れはじめた想いの渦が

時を巻き込みながら走り出す

思い描いた空へと 飛び立っていく

さあ 進め！

薄紅から深紅へと
勢いを増していた薔薇の花びら
それがいつしか芯に澱を溜め 暗く色を変えた

愛し過ぎたせい それとも求め過ぎたせい？

溢れる期待 愛される歓びに我を忘れた
胸が締め付けられ 苦しくなったのは
思い通りにならなくなったから…
相手の気持が解らなくなったから…

もがいて 虚空に手を伸ばして
すっかり囚われの独り相撲となって…
愛は与えるものじゃなく
ただ貪り もぎ取るものとなっていた

気付かぬうちに いつしか
自己愛の罠にかかり
澱みの中へと落ちていく

その刹那 目が捕えたのは
深い紅色の薔薇の花びらが
削げ落ちるように ハラハラと散りゆく様

追い求めるばかりの
勝手な自己愛だったのに
これが『真実の愛』と思い込んだ時から
苦悩が始まった 憂い惑いの迷宮の彷徨が始まった

朽ちてしまった想い
散ってしまった愛の残滓に
あの日の熱情 燃え尽きて帰る事のない炎を
忘れる事が出来ずに
落ちた深紅の花びらに心を寄せる

この時 悲しむ場面に 何を学ぶか？
ただ未練心を抱えて日々泣き暮らすのか？
それとも涙しながらも悔恨して
自分を見詰め直すのか？

自分を見詰め振り返る人は
きっと『明日の自分』を創っていくだろう
奪い取り貪り尽くすだけじゃない
『真に愛する自分』を創るだろう
向き合う愛情対象の選びも考えるだろう

だが 打ちひしがれて
寂寥の大河に身を投じて流され行く人は
二度と咲く事のない花びら
『愛の残滓』をただ漁るのみ…

全て運の流れは因果律で動くもの
自らの心の因をどう創るかによって その結果が変わる
そして絶望の情況は 本当は新たな希望を創る時…


『愛の残滓』復刻改稿

何かに怯えているのだろうか？
近くを遠くを見詰める目

それとも 何か期待に胸膨らませているのだろうか？

キミのような顔を よく知らないから あまり見た事がないから
どんな気持 どんな心 どんな人なのか さっぱり解らない…
でも 何だか悲しそうに見える 辛そうに見える

きっと そうなのかもしれない

こんな人形（ひとがた）に封じ込まれた
キミの御霊（みたま）が泣いているんだね

こんな異郷の地まで運ばれて…
心底寂しいんだね

連れ出して欲しいのかな？
それとも人形を壊して
御霊を抜け出させて欲しいのかな？

でも キミは人形に心を宿したキミなのだから
そのまま生きて活き続けるのが キミの人生

きっとキミの身柄を引き受けて
安住の地をくれる人が やって来るから

だからそんな顔をしないで

そっと微笑みかける表情になってみよう

春夏秋冬

晴れた日も 曇りの日 雨の日も

時には吹き荒れる嵐の日も

人の波に包まれ 人の群に囲まれ

朝な夕なに 宵闇に

様々な場面の人の織り成すドラマを見詰める

慈愛に満ちたまなざし

いつだって 決して人を責めたりしない 怒りもしない

人が愚かで 弱くて 脆い生き物と思っているから

ただ静かに微笑み続けている


いつから居るのだろう

何も語らず ただじっとして…

何もかも知っているのに 解っているのに…


渋谷モアイ像

降りしきる雨

そんな雨の中を急いでも
決して雨はやまないのに

じっとしている事が出来ないで
思わず前のめりになってしまう

ゆっくり歩いていたら
重苦しい雨雲が切れるかもしれないのに

待っていれば 雲間から陽が
射し込んでくるかもしれないのに
つい 急ぎ足になってしまう

ずっと雨が降り続く訳じゃない
一生雨の中を歩き続ける訳でもない

それなのに 逃げ出したくて
駆け出したくなってくる

通り雨かもしれない
ただこの一時なのかもしれない

そんな風に思って 顔を上げて
傘の群の中から 空を見てみよう

少しの変化も見逃さないように
雲の動き 風向きを追ってみよう

あと少ししたら 明日になったら
晴れ渡る空になるかもしれないから

心の中に胸の内に 陽が射し込む時が
もうすぐ来るかもしれないから

さあ 顔を上げて

あの空の遠くに目を向けてみよう