
『クレブス・ペルオスの迫害と恐怖』 城山羊の会プロデュース
作・演出/山内ケンジ
下北沢駅前劇場
原金太郎・大沢健・初音映莉子・金谷真由美・岡部たかし・渡部友一郎
とある国。何だかスペイン風。時代情況は不明。少し前の現代というべきか。悪魔と言われる豪族(名士)に美しい妻(12人目)がいる。その妻が若く美しい青年と恋に落ち、逃避行に出る。
妻を取り戻し、青年への制裁を課すために旅立つ。従者、小間使い、その息子が絡んで、舞台が繰り広げられる。
名士はこれまで裏切った妻達を次々に殺戮しているのである。裏切られる悲しみが心に悪魔を宿す事になったのであろう。
時空がバラバラに飛び出し、場面を変えていく。
舞台は中央に巨大な壺を配し、後は壁だけの簡素な装置。演者の動きと台詞回しで物語を引っ張っていく。
演者の語り、仕草の力量が問われる芝居構成である。
小間使いの役に金谷真由美さん。以前より親しくしている女優さんである。かつて「愛の寸劇」も紹介した事がある。
人の心に棲む悪魔や優しさ、弱さといったものの不条理を追及した作品である。
追われた二人。妻は男を助けるために海に身を投げる。その後に名士は男の逆襲に合い殺されてしまう。ラストはこの若い男が悪魔クレブス・ペルオスになって幕。
緊張の舞台。役者の演技の競い合いと連携調和の妙。
難解な出し物を皆見事に演じて、充実の舞台であった。