
白蛇の祟りの占 平成14・11・5 占断
およそ七十年前の話である。相談依頼人の母親の実家での事である。一族の度重なる悲惨な情況が、古い過去の出来事から起きている筈と告げる母親からの代理占断を長男より求められたのである。
かつては、広大な土地を所有、**空港付近の大地主が実家である。かなりの隆盛を誇った一家であったが、現在では、所有地も殆ど無くなり実家は衰亡して絶える寸前であると言う。
七人兄弟であったが、既に皆、変死怪死を遂げており残っているのはこの母親ひとりである。階段から落ちて死んだ者、首吊り自殺を遂げた者、呼吸不全で窒息死した者、難病に罹り亡くなった者、いずれも天寿を全うする事無く逝ってしまったのである。
甥や姪も数名残っているが、精神疾患になっていたり、病気がちだったり、壮健で栄えている者は一人も居ない。
本家では嫁いできた嫁の奇行があり、不思議な行動を取っており皆心配しているのだが、その原因を案じているのが、この依頼人の母親なのである。
その嫁の行動とは、夏の暑い夜に家宅の外廊下に布団を敷いて寝てみたり、しばしば木によじ登ったするらしい。
過去の出来事というのが、本題なのであるが・・・
里は古い家で、広大な土地に大きな屋敷があったという。その家の納屋にいつしか白い蛇が棲みついて、相当の大きさになっていたという。
屋敷に棲む蛇は守り神と言われ、ましてや白蛇となれば、敬い大事にすべきものであり、絶対に冒してはならない存在である。しかし、いたずら心を起こした兄弟がこの蛇を捕まえ、なんと殺してしまった上に食べてしまったというのである。果たして、青大将が変体した白蛇と思われるのだが、食べて旨い筈もないのだが、その情景を母親はいまだに克明に覚えているらしい。
そこで、白蛇の崇禍(すうか=祟り災い)を占断したのである。
卦は火沢睽変沢水困を得る。
果たして、様々な一族の凶事がこの蛇の祟りによるものか?
崇禍の占ゆえ、用神は官鬼であるが、蛇を表す十二支の巳が卦中にあれば、その情勢を観るべきである。卦中には巳が両現(二つ現れる)しており、月墓の動爻である。初爻は動いて寅の官鬼を化出している。鬼に連なる巳であり、間違いなく崇禍があると断定してよい。朱雀が臨み火の象で激しい怒りの情を示している。又、上爻の巳は未の兄弟を化出しており、蛇が兄弟に連なっている象であり、蛇の崇禍が兄弟めがけて起きている事を表している。
五爻では、未兄弟が動き酉の子孫を化出。子孫の星は災厄を消滅せしめる鬼殺しであるが、残念ながら空亡である。さらに日の支である丑から冲を受け、酉子孫が空亡ゆえに崇禍を免れることができなかったのであろう。
五爻には子妻財が伏して(隠れている)いるが、日の丑と合しているが剋の合ゆえ、嫁も崇禍を蒙った事を表しているようである。
いずれにせよ、未兄弟が妙な動きを示しており、蛇の祟りを呼んだのは間違いない所である。
世爻を依頼人の母親として観ると、酉子孫が臨んでいる。空亡ではあるが、月日の戌、丑の土行から生じられており、災厄を免れている象となる。母親は、決して蛇の惨事を忘れる事無く、日々欠かさず手を合わせているそうである。心が通じているのだろう。
この霊障について、科学的に考察するなら、蛇の怨念というものが一体いかなるものか? という大きな疑問にぶつかるのである。脳生理学的には、蛇の持つ脳など極小であり、記憶細胞などというものが果たして存在するのかである。何故に崇禍が発生したのか、「事実は奇なり」で実際悲惨な霊現象に見舞われた一家の現実がある訳であり、思考を巡らせてもよく解らないのである。死すれば霊体となって別存在となるのか、さもなければ、動物霊を仕切っている神霊が怒って成敗するものなのか。究極の疑問である。